研究会活動

テーマ;「 日経平均連動仕組み債」勝訴判決

報告内容

報告者

田端聡(弁護士で当会会員)

研究要旨

「日経平均連動仕組債」勝訴判決(*)を題材にして,①訴訟における仕組債の議論の方法,②適合性原則違反の論証,③尋問時の工夫,の3点につき,報告・研究を行った。

(*)大阪地裁第3民事部(合議)平成24年12月3日判決:田端会員担当
全国証券ウエブサイト掲載:

http://cgi2.osk.3web.ne.jp/~syouken/db/data/241203.html

訴訟における仕組債の議論の方法

 事案に応じた説得方法が重要である。多種多様な商品や事案があるので,その事案の特性を捉えた議論を行うべきである。
本件においては,被害者原告らは高齢の夫婦であり,投資経験もほとんどなく,商品内容を全く分からないまま購入した事案であった(なお,10年物仕組債で中途換金が原則できないものであった)。

そこで,商品構造論に過度に入り込みすぎるよりも,事案の実情を素直に前面に押し出す方が良いと考えた。

証人尋問では,原告からはその善良さ素朴さ,他方で,担当社員からは商品内容の問題性と勧誘態様の杜撰さを分かり易く浮かび上がらせることに留意した。

適合性原則違反について

 1 学説では「広義の適合性・狭義の適合性」等と言った議論が行われているようだが,実際の訴訟において重要なことは,最高裁平成17年判決が不法行為を構成すると判示した諸要件の充足の有無である。

前記議論に拘泥せず,この諸要件に沿いつつ,当該事案が前記諸要件を充足していることを論証することが大切である。

 

2 前記最高裁判決の以後、同判決に拠って、適合性原則違反を認めた裁判例としては,
大阪地裁平成18年4月26日
大阪高裁平成20年6月3日
大阪地裁平成22年8月26日
等がある。(リンク先は全国証券問題研究会の判例データ集)
これらの事案では,集中投資,適合性審査を無視した勧誘の態様,内部ルール違反等が,不法行為の判断要素として採用されている。

これは,前記最高裁判決が「顧客の投資経験,証券取引の知識、投資意向、財産状態等の諸要素を総合的に考慮する必要がある」と判示していることに基づき,上記の諸点を総合判断のための「諸要素」として主張し裁判所もこれを認容したものである。

 

3 適合性原則違反の指摘は,説明義務違反の指摘の前提としても重要である。

担当社員において顧客投資家の投資経験や投資意向等を具体的に把握していないなど適合性に配慮を払っていなければ,その担当社員が顧客投資家の諸属性に応じて実感を持って理解できるような適切な説明を行い得るはずがないからである。
裁判所に,適合性原則違反ではないか、少なくとも大きな問題があるのではないかとの疑念を持ってもらうことが,説明義務違反を認定し易くすることにつながると言える。

証人尋問について・特に証券外務員に対する場合

  1. 言うまでもないことだが,十分な準備を行って臨むことが必要。「分からないから教えて欲しい」という尋問態度ではいけない。
  2. 中には不誠実な証券外務員もいるので,法廷での証人の証言態度を見て,尋問内容・方法を(柔軟に)変更することも考えるべきである
  3. 有効な弾劾的資料の使い方にも工夫を要する。その資料を提示して証言弾劾に用いるか、その内容を冷静かつ確認的に問うていくことによって、その内容に沿った証言を引き出すように持って行くのが良いか、など。