研究会活動

テーマ;判決紹介-事業法人に対する仕組債の販売につき…

開催年月日:平成24年8月9日

報告者;安枝伸雄弁護士(京都)

報告テーマ;判決紹介-事業法人に対する仕組債(株価指数2倍連動債)の販売につき説明義務違反を認めた逆転勝訴判決(過失相殺5割)

掲載誌;証券取引被害判例セレクト42号177頁

報告内容

1. 事実の概要

株式会社であるA社と、同社グループの中核企業であるB社が、日経平均株価指数等の金融指標に連動して利率や償還価格が決定される複数の仕組債を購入し たことにより損失を被ったとして、仕組債を販売した証券会社を相手として不法行為に基づく損害賠償を請求した事案。1審請求棄却。 

2.判決内容(大阪高裁平成24年5月22日判決)

(1)商品特性 
本件においてA社・B社が購入した仕組債は、ノックイン型の2倍株価連動債(早期償還条項付き)である。

(注)倍率2倍のレバレッジが掛かっている。 
① 利払日の株価指数に応じて利率が決定 
② 利払日(最初の利払日を除く)の株価指数が一定水準以上になると、早期償還 
③ 株価指数が一度でもノックイン価格以下になれば、償還日に当初価格まで回復しない限り、元本が毀損されて償還。その場合の償還金額は、株価指数の下落率を2倍した率で減額される 
(注)正確に言えば利払日・償還日の一定期日前。 
判決は、本件各仕組み債を株式と詳細に比較した上で、株式を取得するより有利であるとはいい難い、と評価している。また、判決は本件各仕組み債を一般的な 顧客にとっては、本件各商品の内容、特にリターンとリスクに関する全貌について理解することは相当困難である、と評価している。 
(2)本判決は、公序良俗違反、詐欺、錯誤、適合性原則違反については否定したが、説明義務違反を肯定した。 
判決は、まず、説明義務の一般論として、証券会社は、条理上または信義則上一般投資家である顧客に対して証券投資を勧誘するに当たっては、当該顧客に対 し、当該投資の内容並びに当該顧客の投資に関する知識経験、理解力及び意向等に応じて、その自己責任の下に適切な投資判断を行わせるために必要な当該投資 商品の仕組みや危険性等に関する情報を提供し、具体的に理解できる程度に説明を行う義務を負う、とした。そのうえで、判決は、本件各仕組み債の商品特性や 顧客の属性からすると、本件では証券会社は、顧客らに対し、本件各商品の特徴やリスク等を十分に説明して、その理解を得させる義務を負っていたというべき ものであるとし、事実経緯、交付書面の記載内容、投資意向等を詳細に検討したうえで、説明義務違反を肯定している。なお、判決は、リスク説明等に関する確 認書類が徴求されていたことについては、これらは買い付け成立の段階で取り交わされているいわば形式的な文書であるとして、その一点をもって説明義務が尽 くされたことの証左とはいえない、としている。

3. 報告者コメント等

判決では、公序良俗違反、詐欺、錯誤の主張は、認められていないが、これらの主張の前提となった商品の重大な欠陥性についての議論は、判決に影響を与えていると思われる。また、適合性原則違反の主張も結果的に否定されているが、説明義務違反を認める前提となっている。 
証拠関係については、専門家による報告書が提出されていることも注目されるが、顧客属性の裏付けとなる報告書等も、事実認定に大きく貢献していると思われ る。この他、金融庁監督指針や日証協勧誘等規則の提出も、それらの制定前の事案であるが、説明義務の議論に事実上影響を与えていると思われる。

要素事項一覧
 
  ノックイン型 2倍株価指数連動債
(日経平均株価連動)
購入時情報
約定日 平成19(2007)年9月3日
購入金額 ¥50,000,000
参考)約定日現在の株価指数 16,505円(日経平均株価)
利息約定
約定利率(年率) 20%×スポット株価指数/当初株価指数-17% (下限は0%)
利払日 3か月ごとの毎年4回
早期償還条件
条項内容 各利払日の日経平均株価がトリガー・レベル以上の場合,自動的に早期償還(円貨で100%償還)
トリガー・レベル 16,505円(日経平均)
満期償還の場合の
償還条件
償還日 平成22(2010)年9月27日
100%償還条件① 一度もノックインレベル
(12,378円)以下をつけないこと
100%償還条件② ノックインしたとしても償還日の株価指数が
当初株価指数を超えていること
上記①,②でない場合 償還日の指標が当初指標を下回った割合の2倍に元本割れした額で償還される
特記事項
  2倍のレバレッジがかかっている(リスクが拡大されている)