研究会活動

テーマ;法人の行ったクーポンスワップ取引一部勝訴報告

開催年月日:平成24年6月21日

報告者;田端聡弁護士

報告内容(文責:浅野永希)

報告テーマ;法人の行ったクーポンスワップ取引一部勝訴報告(説明義務違反・過失相殺5割)

報告内容

1. 商品の内容について

(1) 本件スワップ取引の内容は、3ヶ月毎に行われる豪ドルと円の交換において、豪ドル/円レートが一定額以下の円高になった場合には、円安であった場合の3倍の金額が交換され、円高の度合いに応じて利益の場合の3倍の損失が生じるというものであった。
また、一定額より円安になった場合には早期終了するノックアウト条項が付されていた。さらに、本件スワップ取引では、取引後の市況変動等により追加担保が必要な場合があると定められていた。 
(2) 本件取引は、スワップ取引の形式であるものの、実質は通貨オプションに等しいものであった(コールの買いとプットの売りの比率を1対3で合成しオプションコストをゼロに設定した場合と実質的には同様のものと考えられる。)。 

2.判決内容

(1) 判決は、本件スワップ取引は相当にリスクの高い取引類型としつつ、原告会社の投資意向として早期償還を期待していたと考えられることから、本件スワップ取 引の内容が会社の意向に沿うものであったこと、会社の財産状況から見て取引規模が過大ではなかったこと等から適合性原則違反について否定した。 
(2) 説明義務違反の点について判決は、「本件スワップ取引の性質に照らせば、本件スワップ取引を勧誘するにあたり、顧客が為替相場の変動等によるリスクにより 不測の損失を被ることがないよう、本件スワップ取引の仕組み、取引に伴うリスクの存在等について、顧客の代表者の理解力に応じた説明をすべき義務を負う」 とし、本件スワップ取引においては、
① 顧客が被る損失が理論上無限定であること、
② 現実に顧客が被る可能性が想定される最大損失額、
③ 追加担保の差入れが必要となることの有無及びその条件、
④ 中途解約には解約清算金が必要となるため中途解約が事実上困難なこと、

の4点について説明すべき義務があるとして、被告証券会社側に説明義務の違反があったことを認めた。 

3. 報告者コメント等(説明義務認定の背景)

担当社員の反対尋問で、被告会社は,過去1年間のヒストリカルボラティリティの2倍のボラティリティにより顧客に不利な方向に変動したシナリオを用い、評価損額の最大値を算定し、これを差入担保額としていたことが明らかになった。
裁判所は、このように「評価損額の最大値」が現に計算されていたことも念頭に置いて、想定最大損失額の説明義務を認めたものと思われる。
また、差入担保額について上記のような計算を行うことからすると、実際に顧客に損失が発生していなくても、為替レートの変動が顧客に不利な動きをすれば追 加担保が発生しうることになり、このような事態は顧客には想定しにくいと思われる。このことも前記説明義務(上記③)の認定につながる要素の1つになった と考えられる。 
また、説明義務違反の主張に対して、裁判所から説明義務の内容を特定するよう要求されたが,これ対しては、説明義務を個々的に評価すべきではなく総合的に 判断すべきことを強調することも重要との指摘があり,実際の準備書面(抜粋)の記述を基に報告がなされた。