研究会活動

テーマ;仕組債の時価算出・リスク分析についての講演

開催年月日:平成24年5月10日

講師;株式会社アップフロント 代表取締役四宮淳氏

講演内容(文責:今井孝直)

報告テーマ;仕組債の時価算出・リスク分析についての講演

報告内容

1. 仕組債被害の要因

一般投資家を含め多くの投資家が仕組債による被害を蒙っている原因として次の三点に焦点を当てることが出来る。 
① 販売時点で既にその理論価値が元本を大きく下回っていること 
② 投資家が過剰なリスクを負うという構造上の問題があること 
③ 販売時にリスク説明が適切にされていないこと

2.理論価格(債権の時価)とは何か。

理論価格(債券の時価)=将来のキャッシュフロー(クーポン及び元本の支払い)を評価時点の価値で表したもの 。例えば、市場金利が1%とすると、「現在の1」は「1年後の1.01」と等価だから、「1年後に元利金合計100円を受け取る債券」の理論価格(債券の 時価)は、99円00銭(=100円×100/101)ということになる。 
この割引率さえ決まれば、満期2年以上の債券でも同様の考え方で理論価格(債券の時価)を算出することができる。特に、将来のキャッシュフローが確定しおればこの計算は単純である。

3. 仕組債の理論価格(債権の時価)の算出方法

仕組債は、クーポンや元本の金額・支払時期が金融指標に連動するためキャッシュフローが確定しておらず、上記のような単純な計算ができない。そこで、このキャッシュフローをどうやって算出するのかが問題となる。 
講演においては、為替に連動する仕組債を例に、金融工学に基づき為替の変動を確率的に表し、「将来のキャッシュフローの期待値」を求める考え方が示され た。特に、仕組債のキャッシュフローは複雑であるため、乱数により為替変動の経路(path)を数多く想定し、満期まで想定できる為替の分布を擬似的に作 成することによって期待値を求める考え方(モンテカルロ・シミュレーション)が紹介された。 
金融工学的観点からこの計算過程に問題がないと言えれば、将来のキャッシュフローが確定していなくとも、「将来のキャッシュフローの期待値」に上記2にある「割引率」を乗じて、仕組債の理論価格(債券の時価)を求めることができるわけである。

4. 仕組債のリスク分析

以上の基本的な考え方を基礎に、仕組債のリスク分析の実際が紹介された。 
分析の観点は以下の三つである。

① 購入時の理論価格が当初投資額(元本)に比して低すぎないか。 ~低すぎるのであれば、それは経済的合理性を著しく欠く取引、換言すれば(不合理な)博打でしかない。

② 購入後の市場変動による理論価格の変動はどの程度か。

③ 早期償還リスクなどの「ストラクチャー・リスク」はどの程度か。

  以上の観点からある為替連動型の仕組債(早期償還条件付きの30年満期債券)のリスク分析を行うと、購入時の理論価格は当 初投資額(元本)の約70%しかなく、しかも円相場が10%円高に向かうだけで理論価格は約20%下がる、すなわちその時点で中途売却を試みるのであれば 当初投資額(元本)の約50%としか評価されないような債券になっているというハイリスク性が示された。 
また、購入後4年目頃から早期償還となる可能性が極端に小さくなる、すなわち当初3年間のうちに早期償還にならなければ満期30年を覚悟せざるを得ないこ とが数値で示され、かつ、満期で償還される場合に期待される償還元本(設例では外貨償還)は、当初元本の40%弱にまで落ち込むこともまた数値で示され た。 
このような事態は「円高になると価格下落リスクがある。」という表面的な説明では到底覚悟しうるものではない。すなわち、この仕組債を購入した投資家はデ リバティブ取引に内在する過剰なリスクを負っており、しかもそのリスクは表面的には実感しにくいものとなっている。

  以上の次第で、仕組債のリスクを具体的に実感をもって理解するためには、理論価格(債券の時価)はいくらか、そしてそれは金融指標の変動でどう変化するのか、という「定量的リスク分析」が極めて重要となる。